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2026.06.18

レアメタル千夜一夜 第158夜 AIはレアメタルを爆食する(続編)――GPUとHBM革命――AI文明の「頭脳」と「短期記憶」を支える金属たち

 自宅で朝刊を広げると、またNVIDIAの文字が躍っていた。世界の株式市場はNVIDIA一色である。時価総額は国家予算を凌駕し、投資家はGPUという言葉に熱狂している。しかし、私はその報道を見るたびに違和感を覚える。世間はAI革命をソフトウェア革命として語る。ChatGPT、生成AI、自動翻訳、画像生成。確かにそれらは目に見える成果である。しかし、レアメタルの現場を半世紀歩いてきた山師の目には違う景色が見えている。AI革命とはソフトウェア革命ではない。その本質は、「巨大なハードウェア革命」であり、さらに言えば、「資源と電力の革命」なのである。


GPUという名の人工知能の脳


 現在のAIブームの中心にいるのがGPUである。GPUとはGraphics Processing Unitの略で、本来はゲーム画像を高速処理するために開発された半導体だった。ところがAI時代になって状況は一変した。人間の脳が無数の神経細胞を同時に働かせるように、GPUは膨大な演算を並列処理できる。生成AIは何兆回という計算を瞬時に行う。そのためCPU「Central Processing Unit」「中央処理装置」では限界がある。そこでGPUが主役となった。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、「AIは新しい産業革命である」と語っている。私はこの発言に全面的に賛成である。なぜなら現在起きている現象は、かつての蒸気機関や電力革命に匹敵する変化だからだ。しかしGPUだけではAIは成立しない。脳だけでは人間が生きられないのと同じである。


HBMという短期記憶革命


 そこで登場するのがHBMである。HBM(High Bandwidth Memory)は超高速メモリであり、人間に例えるなら短期記憶装置である。私たちは会話をするとき、相手の言葉を一時的に記憶しながら思考する。AIも同じである。GPUが計算し、その結果をHBMに保存しながら次の演算を行う。問題は速度だ。AIの計算量は指数関数的に増えている。通常のメモリでは追いつけない。そのためGPUのすぐ隣にHBMを積層して配置する技術が生まれた。現在、この市場を支配しているのは、SK hynix、Samsung、Micronの三社である。しかし私は企業名よりも、その背後にある資源に注目している。


AI半導体の裏側に潜むレアメタル


 AI革命は実はレアメタル革命である。HBMや先端半導体には、タングステン、タンタル、コバルト、ルテニウム、ニッケルなどのレアメタルが大量に使われる。特に私が注目しているのはタングステンである。タングステンは融点が3400℃を超える。金属の中でも極めて耐熱性が高い。AI半導体は膨大な熱を発生する。従来の材料では耐えられない。そこでタングステンが微細配線や接続材料として重要性を増している。私はかつて日本の鐘打鉱山や喜和田鉱山の歴史を調べながら、「タングステンは再び脚光を浴びる日が来る」と思っていた。その予感は現実になりつつある。AI革命が進むほどタングステン需要は増える。まさにレアメタル市場の新しい成長エンジンである。


中国が握る静かな支配


 さらに問題は地政学である。多くの人はAI競争を米中半導体競争として見ている。しかし本質はもっと深い。中国はレアアースだけではない。タングステン、アンチモン、ガリウム、ゲルマニウム、グラファイトなどの供給でも圧倒的な地位を持つ。しかも恐ろしいのは鉱山保有量ではない。精製工程を支配していることだ。私は長年、「鉱山を持つ者より工程を支配する者が勝つ」と言い続けてきた。AI時代になり、その法則はますます鮮明になっている。GPUがなければAIは動かない。HBMがなければGPUは能力を発揮できない。そしてレアメタルがなければHBMは作れない。つまりAI文明は資源の上に築かれているのである。


AI革命第二幕の幕開け


 私は最近、「AI革命第二幕」という言葉を使っている。第一幕はGPU革命だった。NVIDIAが世界を席巻した時代である。しかし今始まっている第二幕は違う。HBM、SSD、データセンター、送電網、電力、銅、レアメタル。市場の関心は徐々にインフラへ移り始めている。AIはもはやソフトウェアではない。巨大な産業インフラなのである。その結果として、世界中で資源争奪戦が始まる。レアメタルを制する者がAI文明を制する。そして工程支配を握る者が最終的な勝者となる。AI革命は始まったばかりだ。しかしその背後では既に、静かなレアメタル戦争が進行しているのである。


  • レアメタル千夜一夜 第157夜 AIはレアメタルを爆食する ――GPU、送電網、磁石、そして「工程支配」の時代へ
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