お知らせ
2026.07.31
以下は6月26日に航空会館で行われたCMSS・レアアース編の講演者の一人であるUMC Resources CEO(AMJ founder) 中村繁夫氏による質疑応答反論編である
AI文明はレアメタルを爆食するのか
― 第二の資源革命・その先に見える第三の革命 ―
私は先日、「AI文明はレアアースを爆食する」という講演を行った。講演後、多くの質問をいただいた。その中でも興味深かったのは、本当に2030年まで資源需要は増え続けるのか」という問いだった。私は改めて考えてみた。山師とは、自説を疑う人間でもある。自分の仮説に反論をぶつけて初めて、本当に強い未来予測になる。そこで今回は、あえて私自身の論文に三つの反論を加えてみたい。
第一の反論
AIは「爆食」ではなく「引き算」を始める
私はこれまで、AIはデータセンターを巨大化させ、GPUを増やし、電力を消費し、レアメタルを爆食すると論じてきた。しかし技術は直線では進歩しない。飛躍する。生成AIそのものが、「もっと少ないGPUで同じ知能を実現する」アルゴリズムを自ら生み出し始めている。さらに光電融合、光チップ、アナログコンピューティング、量子技術が社会実装されれば、電力も冷却設備も現在の延長線上では語れなくなる可能性がある。AIは資源を食べ続ける存在ではなく、資源を節約する知能へ進化するかもしれない。これは第二の資源革命の中から芽生える、「第三の効率革命」である。
第二の反論
高値になった資源は必ず代替される
私は半世紀以上、レアメタルの世界を歩いてきた。その経験から一つだけ絶対法則がある。高くなり過ぎた資源は、必ず代替される。銅が高騰すればアルミが伸びる。ガリウムが止まれば新材料が生まれる。希少金属が囲い込まれれば、世界中の研究者が代替技術を競争する。現在、カーボンナノチューブ、グラフェン、新型導電材料、次世代パワー半導体など、中国の工程支配を無力化する研究は猛烈な勢いで進んでいる。山師は価格だけを見るのではない。価格が未来の技術を呼び込むことを見る。資源争奪戦は、同時に素材革命でもある。
第三の反論
信頼だけでは国家は守れない
私は最後に「信頼こそ最大の戦略資源」と結論づけた。この考えは今でも変わらない。しかし、それだけでは十分ではない。コロナ禍では、世界中の友好国が自国民を優先した。ワクチンも医療品も輸出が止まった。資源でも同じことが起こる。有事になれば、国家は必ず自国を守る。だから日本に必要なのは、信頼だけではない。世界が「日本を止めたら自分も困る」と思うほどの、代替できない技術を持つことである。高純度化技術。半導体製造装置。超精密加工。工程管理。これらは日本が長年築いてきたブラックボックス技術である。私はこれを「技術による相互確証抑止」と呼びたい。軍事ではなく、技術で世界を止めることができる国だけが、最後まで交渉力を持つ。
新しい未来予測
以上の三つの反論を踏まえると、2030年以降の世界は、次のような姿になるだろう。第一段階ではAIインフラが爆発的に拡大し、銅、レアアース、ガリウム、ゲルマニウムへの需要が急増する。第二段階では、AI自身が効率化技術を生み出し、電力やレアメタルの使用量を抑え始める。第三段階では、代替材料や新しい半導体技術が成熟し、資源そのものよりも、「技術」と「工程」の競争へ移る。最終段階では、資源でもAIでもなく、代替できない技術と世界からの信用を持つ国家が勝者となる。
結論
私は今でも、AI文明は第二の資源革命を起こすと確信している。しかし、その先には、技術革新による省資源化、素材革命による代替、そしてブラックボックス技術による新たな国家戦略という、第三の革命が待っている。山師は未来を一点では見ない。複数の未来を見比べ、その中で最も起こりやすい道筋を探す。AI文明とは、資源だけの時代でも、技術だけの時代でもない。資源・技術・信頼の三つが絡み合う、新しい文明の始まりなのである。