お知らせ
2026.04.06
第一章
世界を支配する三つの潮流
前回の第131夜では、これからの世界が三つの大きな潮流に支配されると書いた。
第一に AI革命。
第二に 資源争奪戦。
第三に 地政学リスクの高まり である。
この三つは互いに独立した現象ではない。むしろ相互に絡み合いながら世界経済を大きく動かしている。AI革命は巨大な計算能力とデータセンターを必要とする。その裏側では膨大な金属資源が消費される。GPUや半導体製造装置にはガリウム、ゲルマニウム、インジウム、ネオジムなどのレアメタルが不可欠である。さらにAIインフラを支える電力設備や送電網には銅やニッケルが大量に使われる。
つまりAI革命は単なるIT革命ではなく、金属とエネルギーを大量に消費する産業革命なのである。その結果、レアメタルやレアアースを巡る争奪戦が激しくなる。中国はすでにレアアース精製能力の大半を握り、ガリウムやゲルマニウムの輸出規制も強化している。資源は単なる商品ではなく、外交カードとして使われる戦略物資となった。
そしてこの資源争奪戦をさらに複雑にしているのが地政学リスクである。中東、ウクライナ、台湾海峡――これらの地域はすべて世界経済の重要な供給網に関係している。この三つの潮流が同時に動くことで、世界はこれまで経験したことのない複雑な時代に突入している。
第二章
三大覇権国家の奇妙なリーダーたち
世界政治を動かしているのは、いつの時代も個性的な指導者たちである。まずロシアである。かつてボリス・エリツィンの後継者として登場したウラジーミル・プーチンは、当初は比較的穏健な改革派と見られていた。しかし彼は次第に権力を集中させ、今やツァーリの如き権力を持つ長期政権の指導者となった。旧ソ連時代からロシアを訪れてきた私にとっても、今日の状況は予想外であった。EUをナチスドイツと並べて語り、緩衝国家であるウクライナへ侵攻するとは誰が想像しただろうか。この戦争は短期で終わるどころか、長期的な消耗戦の様相を呈している。
次に中国である。1970年代の日中友好の時代、日本人の多くは中国を親しい隣国として見ていた。まさか半世紀後にここまで政治的緊張が高まるとは想像もしなかった。習近平政権は権力集中を進め、国内では強烈な愛国教育を展開している。反日キャンペーンも強まり、かつての友好ムードはすっかり消えてしまった。もし台湾海峡で軍事衝突が起これば、日本も無関係ではいられないだろう。
そしてアメリカである。トランプという政治家は、ある意味で現代政治の寓話的存在だ。童話「裸の王様」を思わせる大胆さで、既存の政治常識を次々と破壊していく。その言動はしばしば混乱を招くが、同時に世界政治を劇場のように面白くしてしまう。プーチン、習近平、トランプ。この三人を並べてみると、人類の未来を握るリーダーが実にユニークな人物であることに気づく。歴史とは、時として驚くほど個人的なキャラクターによって動かされるものだ。
第三章
人類はなぜ愚かなリーダーに振り回されるのか
歴史を振り返ると、人類はしばしば奇妙な指導者たちに支配されてきた。ナポレオン、ヒトラー、スターリン。どの時代にも強烈な個性の指導者が現れ、世界を混乱に導いてきた。現代も例外ではない。しかも今は核兵器という究極の破壊力が存在する。指導者の判断一つで人類文明が危機に陥る可能性すらある。
考えてみれば、人類という生き物は驚くほど知的な存在でありながら、政治という分野では驚くほど非合理的な行動をとる。科学技術は月面に到達するほど進歩したが、国家間の争いは依然として続いている。実に情けない話である。
第四章
AIバブル調整と世界経済の行方
現在、世界の金融市場ではAIバブルの最初の調整が起きている。半導体株やハイテク株は急騰の反動で短期的な下落を経験している。しかしこれは長期的な崩壊ではなく、巨大な技術革命の途中にある調整と見るべきだろう。問題はむしろ地政学である。中東で起きた緊張の高まりはエネルギー市場に影響を与え、世界経済を揺さぶっている。この地域の混乱は短期間では解決しない可能性が高い。
第五章
四つの未来シナリオ
ここで世界の未来を四つのケーススタディとして整理してみよう。
ベストシナリオ
中東情勢が徐々に安定し、ウクライナ戦争も停戦に向かう。AI投資は継続し、半導体と資源産業は成長を続ける。世界経済は新しい技術革命の恩恵を受け、比較的穏やかな成長軌道に乗る。
ベターシナリオ
地政学リスクは残るが大規模戦争には発展しない。AI投資と資源価格の上昇が世界経済を支える。軍需産業とエネルギー産業が景気の下支え役となる。
バッドシナリオ
中東紛争が拡大し、エネルギー価格が急騰する。世界経済はインフレと金融混乱に直面し、AIバブルも大きく調整する。
ワーストシナリオ
台湾海峡や中東で大規模軍事衝突が起こり、世界経済は深刻な混乱に陥る。資源供給網が分断され、半導体産業も大きな打撃を受ける。
終章
それでも春はやってくる
こうして未来を考えると、世界はずいぶんと危うい場所に思えてくる。AI革命、資源争奪戦、地政学リスク。どれも巨大な波であり、人類はその渦の中にいる。しかし歴史はいつもそうだった。戦争や混乱の時代の中でも、人々は新しい技術を生み出し、社会を発展させてきた。やがて桜の季節がやってくる。世界がどれほど騒がしくても、春になると桜は咲く。それを見ると、少し肩の力を抜いて未来を考えることも悪くないと思えてくるのである。