お知らせ
2026.02.17
商社の資源開発の現場で、私は数々の「資源の武器化」を目の当たりにしてきた。だが、2026年現在の緊迫感は過去のどれとも違う。中国がガリウムやゲルマニウムの輸出を「蛇口」を絞るように管理し、我々製造業の喉元に冷たい刃を突きつけているからだ。しかし、「山師のアルケミスト」としての直感はこう告げている。「この窮地こそ、日本が資源の主導権を奪い返す最大の好機(ディール)である」と。その鍵を握るのが、南鳥島の深海開発と連動する「日米資源同盟」だ。今、水面下で進んでいる対中無力化の具体的シミュレーションを、実名を挙げて深掘りしたい。
1. 「価格の暴力」を封じる防弾チョッキ ―― トランプ流・固定価格(プライスフロア)の威力
商社時代、最も恐ろしかったのは中国による「意図的な暴落」だった。我々が巨額を投じて代替鉱山を開発しても、中国が市場に安値を流せばプロジェクトは一瞬で瓦解する。この「経済性の罠」を無力化するのが、2025年11月に締結された日米重要鉱物枠組み合意である。
• 「米国政府の買い取り保証(オフテイク)」: トランプ政権は、南鳥島や同盟国で採掘されるレアアースに対し、市場価格に左右されない「固定価格での長期買い取り」を事実上保証した。これにより、住友金属鉱山や豊田通商といった開発主導企業は、中国のダンプ(投げ売り)を恐れずに巨額の設備投資を断行できる「防弾チョッキ」を手に入れたのだ。
2. 「素材の飢餓」を救う日米垂直統合 ―― トヨタ、信越化学が手にする直接的利益
中国の輸出規制が最も突き刺さるのは、日本の「お家芸」であるモーターと半導体だ。だが、日米同盟はこの供給網を中国の手の届かない場所へと物理的に移動させている。
• モーター産業の心臓部を死守:トヨタ自動車は、信越化学工業と連携し、南鳥島の高品位なネオジムやジスプロシウムを用いた「完全国産・純正モーター」のライン構築を急いでいる。これまでは中国の精錬工程を通さざるを得なかったが、米国がアラスカや自国内での精錬拠点整備を日本企業に開放。これにより、中国が「禁輸」を叫んだ瞬間、トヨタのEV生産が止まるという悪夢は「無力化」される。
• 電脳の視力を守るガリウム包囲網:次世代半導体の鍵を握るガリウムについても、日米はアルミ精錬の「副産物」としての回収技術をJX金属等と共有。中国が輸出を止めるなら、米国内の休止鉱山を日本の技術で再起動させ、直接日本へ回すルートを確立した。これは製造業にとって「在庫の不安」を「技術の優位性」に変える劇的な転換だ。
3. 「太平洋の盾」がもたらす金融的リターン ―― 資源ナショナリズムへの逆襲
かつてアフリカや南米で我々が味わった「突然の国有化」や「不透明な関税」。こうした利己主義的な資源ナショナリズムに対し、日米同盟は「宇宙銀行」にも通じる強固な金融防衛網を敷こうとしている。
• 「クリーン・プレミアム」の創出:南鳥島のレアアースは、放射性物質を含まない「エシカル(倫理的)な資源」として、アップルやテスラといった米系巨大テック企業への優先供給枠が検討されている。これにより、中国産の「汚れた資源」を排除し、日本企業が生産する部材に圧倒的な付加価値(プレミアム価格)を付与する。
4. 結び:山師が掴む「最後の勝利」
中国の輸出規制は、日本を屈服させるための「断頭台」のはずだった。しかし、日米が資源の「採掘・精錬・買い取り」の全工程でスクラムを組んだことで、その刃は今、中国自身の輸出利益を削ぐ「諸刃の剣」と化している。日本国内の製造業、とりわけ素材に命を懸ける丸紅や双日といった商社、そしてそれらを加工する三菱電機などの重電メーカーにとって、この同盟は「供給の安定」という最高のボーナスをもたらす。「資源がない」と嘆く時代は終わった。我々は今、太平洋の深海から、そしてワシントンとの冷徹なディールの中から、中国の覇権を無力化する「21世紀の独立宣言」を書き上げているのだ。