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2025.08.04

レアメタル千夜一夜 第60夜 日本の国益を最大化する日米資源開発戦略(第1部)

プロローグ


 参院選で自民党が大敗した翌日にトランプ大統領から関税を25%から15%に削減するとの発表があった。ところがその内容はとんでもない提案であった。そこで以下を対案として検討したい。


日本の国益を最大化する日米資源開発戦略:80兆円投資の活路 – 公平な利益配分と戦略的資源確保


 トランプ大統領から提唱された日本による80兆円規模の対米投資構想。関税引き下げとのバーターとして持ち上がったこの提案は、利益配分が米国90%、日本10%という不均衡な構図で頓挫したようにみえる。しかし、この巨額の投資を単なる経済援助で終わらせるのではなく、日本の国益に直結する戦略的資源開発へと転換させることで、真の日米win-win関係を構築できる。その前提として、投資に対するリターンはリスク負担に見合うべきであり、80兆円もの巨額投資における利益配分は、5対5を基準とした公平な分配が当然である。


 日本最大の弱点は資源の乏しさである。エネルギー資源のみならず、ハイテク産業に不可欠なレアメタルも海外依存度が高く、経済安全保障上の大きなリスクとなっている。80兆円という巨額資金を、この弱点を克服するための資源開発に投入する戦略こそ、国家の未来を拓く一手となる。


 日本の抜本的資源開発は外圧を利用する以外に本格的資源開発は実現した試しはなかった。地球規模の開発と貢献を発想するリーダーが不在であった。何でもアメリカ追従が習い性になったのかもしれない。それではトランプに騙された振りをしてみてはどうだろうか?


80兆円投資の活路:日米共同資源開発戦略と新たなパートナーシップ


 トランプ大統領が提唱した日本による80兆円規模の対米投資構想は、当初、利益配分が米国90%、日本10%という極めて不均衡な条件により、日本の国益に資するとは言い難い状況であった。しかし、この巨額の投資を単なる経済援助として消費するのではなく、日本の最大の弱点である資源の乏しさを克服するための戦略的資源開発に集中的に投じることで、真に日米双方に利益をもたらすWin-Winの関係を構築する可能性を秘めている。その前提として、80兆円という巨額投資に対する利益配分は、リスク負担と技術貢献に見合う5対5を基準とした公平な分配が不可欠である。


 日本の経済安全保障上の最大の脆弱性は、エネルギー資源のみならず、ハイテク産業に不可欠なレアメタルとレアアースを含む鉱物資源への海外依存度の高さである。この脆弱性を克服し、持続的な経済成長と国家安全保障を確保するためには、80兆円というかつてない規模の資金を、この課題解決に直接的に貢献する資源開発に投入する戦略こそが、日本の未来を拓く一手となり得る。加えて、この戦略は日米の真のパートナーシップを深化させ、ひいては世界の地政学的バランスにも影響を与える可能性を有している。


 本稿では、日米共同による資源開発構想を具体的に提示し、80兆円投資を日本の国益最大化に繋げるための戦略を提言する。焦点は、(1)アラスカにおける天然ガス資源開発、(2)レアアースを含む海底鉱物資源の共同開発、(3)JOGMECおよびJBICを活用したリスクヘッジと資金供給、(4)公平な利益配分の確保、そして**(5)資源開発に限定されない新たな投資の可能性**の5点であるが、資源貧国である日本にとって最優先されるべきは、あくまでも資源確保に直結する投資であることを強調する。


1. アラスカにおける天然ガス資源開発:エネルギー安全保障の確立


 日本のエネルギー政策は地政学的に不十分である。日本は主にサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール等の中東地域から原油を輸入しているがシーレーンの確保は不安定である。仮に台湾有事が勃発すれば石油は入ってこないことは自明の理である。大東亜戦争の過ちを繰り返さないためには別ルートのエネルギー資源の確保が必要になる。


 さて、アラスカ北極圏には膨大な天然ガス資源が眠っており、これらの地域における資源開発に日米が共同で取り組むことは、日本のエネルギー安全保障を抜本的に強化する上で極めて重要である。具体的には、液化天然ガス(LNG)プラントの建設、長距離パイプラインの敷設、およびLNG輸送船の建造など、大規模なインフラ投資が必要となる。これらのプロジェクトにおいて日本企業が積極的に参画することは、日本の高度な技術力とエンジニアリング能力を最大限に活用し、米国における雇用創出と経済活性化に貢献すると同時に、日本国内の関連産業の技術力向上にも繋がる。


 米国地質調査所(USGS)の評価によれば、北極全体には世界の未発見天然ガス資源の約30%が存在し、その大部分がアラスカ北極圏を含むエリアに集中している。


 従って、アラスカにおける資源開発は、米国にとっても経済的利益が大きく、相互利益が明確である。また、開発に伴う環境問題や社会問題への配慮を担保することも重要かつ可能である。何よりも、LNG輸入先の多角化は、中東地域やその他の地政学的リスクを抱える地域への依存度を低減させ、日本のエネルギーサプライチェーンの安定性を飛躍的に高める。


2. レアアースを含む海底鉱物資源の共同開発:ハイテク産業の未来を確保


 日本の排他的経済水域(EEZ)内、特に南鳥島周辺には、世界有数のレアアース泥が埋蔵されていることが確認されている。しかし、水深6,000メートルという深海からの商業規模での採掘は、極めて高い技術的難易度を伴い、日本単独での開発は困難である。この課題に対し、米国の先進的な深海探査・採掘技術と日本の長年にわたる海洋調査技術を融合させることで、この困難なプロジェクトを商業的に実現可能とする道が開かれる。まさに日米の技術力と資金力の融合こそが、この国家戦略級のプロジェクトを成功に導く鍵となる。


 南鳥島以外にも、日本の近海にはマンガン団塊、コバルトリッチクラストといったハイテク産業に不可欠なレアメタルを含む海底鉱物資源が広範に分布している。さらに、グアム島、サイパン島、その他太平洋島嶼国周辺のEEZにおける資源探査・開発にも日米共同で取り組むことで、レアメタルの安定供給体制を構築し、日本の基幹産業であるハイテク産業の未来を支える強固な基盤を築くことができる。日米の緊密な技術連携は、世界の海洋資源開発をリードする国際的な地位を確立することにも繋がるだろう。

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