お知らせ
2025.07.08
はじめに
現在の日本において、食料安全保障の名の下に維持されてきた農業政策、特に米の備蓄と減反政策は、時代の実情にそぐわないものとなっている。その一方で、経済安全保障の根幹をなすレアメタルの備蓄は、その重要性に見合わない水準に留まっているのが現状である。本稿では、このいびつな現状を是正し、2025年以降の日本が国際社会でリーダーシップを発揮するための、抜本的なレアメタル備蓄戦略と新産業戦略を提言する。政治が日本の実体経済を深く分析し、バランスの取れた戦略を策定することの喫緊性が問われている。
Part ❶ 時代遅れの食料安全保障と日本の基幹産業の危機
迷走する米の備蓄と農政の利権構造
昨今、備蓄米の放出問題が表面化し、農林大臣が実質的な罷免に至ったことは、日本の農業政策が抱える構造的な問題を浮き彫りにした。後任の小泉進次郎農林大臣が備蓄米を2,000円台で売り出したことは、世間の大きな注目を集め、その是非が問われている。そもそも、米の備蓄は、グローバルに食料が流通する現代において、もはや時代に逆行する発想である。長年にわたる米の減産政策は、この一年で米価を倍増させる結果を招来し、消費者と生産者の双方に混乱をもたらしている。
農林水産省、全国農業協同組合中央会(JA全中)、全国農業協同組合連合会(JA全農)、全国共済農業協同組合連合会、全国厚生農業協同組合連合会、農林中央金庫、農水産業協同組合貯金保険機構、農林漁業団体職員共済組合といった関連団体は、まさに利権の温床と化しており、決して農民や国民の利益に資するものではない。これらは、農林族の官僚たちの天下り先の維持のためだけに存在しているかのような「公金チューチュー構造」を形成していると批判されても致し方ない状況である。
食料安保の幻想とエネルギー安保の現実
戦後の飢餓を経験した時代に根差す「食料安全保障」の概念は、もはや現在の世界情勢には適合しない。米は世界中から調達可能であり、その美名の下で農業保護政策が漫然と続けられてきた背景には、自民党の強固な支持基盤としての幻想が存在した。
日本の総農業生産額9兆円のうち、米の生産額はわずか1.4兆円に過ぎない。これを支えるのは平均年齢68歳の約100万人の農家である。対照的に、日本の総工業生産額330兆円の中で自動車産業は63兆円と圧倒的な規模を誇り、数百万人の雇用を創出している。衰退する1.4兆円の米作を保護するために、自動車産業のような日本の基幹産業を犠牲にすることは、本末転倒と言わざるを得ない。
真に日本が重視すべきは、食料安全保障に先立つエネルギー安全保障である。最近のイラン/イスラエル紛争におけるホルムズ海峡封鎖の懸念は、日本の原油輸入の90%がこの海峡を通過している事実と、日本が約200日分の原油在庫しか有していない現状を突きつけた。石油なくしては農作業すら不可能であり、エネルギーの安定供給こそが国の基盤を支える。
農業構造改革と新エネルギー戦略
この現状を打破するためには、即座に米の関税撤廃を断行すべきである。これにより余剰となる農地は、太陽光発電所へと転換し、原油・石炭輸入の削減、ひいてはCO2排出量削減にも寄与する。農家は地代収入として、これまでの数倍の不労所得を得ることが可能となり、結果的に地代収入に見合った適正な農地価格が形成されるだろう。現状ではほとんど値が付かない農地が、遥かに高い価格での取引対象となるのだ。そのためには、米の関税撤廃と並行して農地法の抜本的な改正が不可欠である。無論、先祖代々守ってきた農地を手放すことには抵抗感があるのは理解出来る。ならばペロブスカイト型電池を、利用した農地利用や、太陽光パネルの下部の農地で適切な営農を継続する設備も可能である。
一方、トランプ関税の交渉に於いて石破茂氏も赤澤経済再生担当大臣も無為無策である。トランプ大統領にカリフォルニア米の無税輸入と引き換えに自動車の輸出税の引き下げ交渉してはどうか?知恵は生きている内に使うべきだ。
結論
日本の農業政策とレアメタル備蓄制度は、それぞれの背景と現状において異なる課題を抱えている。食糧安保からエネルギー安保へのシフト、そしてレアメタル備蓄の強化は、日本の経済と産業を支えるために重要である。農業政策の見直しとともに、レアメタル備蓄制度の拡充を進め、持続可能な産業基盤を構築することが、日本の将来にとって不可欠である。