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2025.02.18

レアメタル千夜一夜 第12夜 レアアース分野での資源戦略の失敗

前回の「日本の資源音痴と半導体産業の凋落に通じる誤った発想」では余計な事まで長々と「恨みごと」を書きすぎたことを反省しています。但し今回はもう一つ言い足りない話題があることに触れない訳にはいきません。リチウムイオン電池と半導体に加えてレアアース磁石についてもはっきりさせておきたいと思います。


 レアアース(希土類元素)の分野において、そもそも日本がその技術的優位性を活かせず、資源獲得ができなかった結果、特にNdFeB(ネオジウム鉄ボロン)磁石の市場を中国に奪われた経緯について具体的に説明しないと片手落ちになります。よく似たパターンであるが問題点を再々度はっきりさせる必要があります。
 レアアースのケースには領土問題が絡んでくるからもっとタチが悪いです。尖閣列島問題を何の関係もないレアアースの輸出禁止を絡ませてきたから政治問題化したのです。くどいと言われる声が聞こえてきそうだが敢えて繰り返すことになります。以下がレアアース問題の本質である。


### 1. 技術的優位性の確立
– 日本の技術力: 日本は1980年代から1990年代にかけて、特にNdFeB磁石の製造において世界的な技術的優位性を確立しました。TDKや日立金属や信越化学などの企業が、高性能な磁石を開発し、電気自動車、風力発電、電子機器など多様な用途で使用されることとなりました。
– 高品質な製品: 日本製のNdFeB磁石は、高品質で信頼性が高く、特に電子機器や自動車産業において広く採用されました。


### 2. 資源獲得の戦略の欠如
– レアアース資源の依存: NdFeB磁石の製造には、特にネオジウムやディスプロシウムなどのレアアース元素が必要です。日本はこれらの資源を主に中国から輸入しており、安定的な供給源の確保に失敗しました。
– 資源開発への投資不足: 日本企業は、レアアース資源の開発に関する長期的な投資を行わなかったため、資源の確保が困難になりました。特に、国際的な資源確保の競争が激化する中で、他国に対する優位性を保つための戦略が不足していました。


### 3. 中国の台頭と市場の変化
– 中国の資源政策: 2000年代初頭、中国はレアアースの主要生産国として台頭しました。政府が資源開発を強化し、輸出制限を行うことで、国際市場での価格をコントロールし、他国の依存を高めました。
– 生産コストの優位性: 中国は低コストでの生産が可能で、労働力や環境規制の緩さを利用して、レアアースの供給を急速に増加させました。このため、日本の企業は価格競争にさらされ、競争力を失いました。


### 4. 技術の移転と市場の喪失
– 製造、これを基にした製品を市場に投入しました。
– 市場シェアの喪失: 結果として、日本のNdFeB磁石の市場シェアは急速に低下し、中国製の製品が市場を席巻するようになりました。これにより、日本の企業は技術的優位性を失い、長期的な競争力も低下しました。


### 5. 現在の状況と今後の展望
– 資源の多様化とリサイクル: 日本は今後の戦略として、レアアース資源の多様化やリサイクル技術の開発に力を入れる必要があります。特に使用済み製品からのリサイクルによって、安定した供給を確保することが求められています。
– 国際的な連携: 他国との連携や共同開発、資源確保に向けた国際的な戦略を強化することも重要です。これにより、レアアースの供給の安定性を確保し、競争力を再構築することが期待されています。


### まとめ
リチウムイオン電池の発明者(吉野彰博士)もネオジム磁石の発明者も日本人(佐川眞人博士)であるにも関わらず我々は両分野で後塵を拝している。日本はネオジム磁石の製造において技術的優位性を有していたものの、レアアース資源の獲得戦略に失敗し、資源の依存を深めてしまいました。中国の台頭により市場シェアを奪われ、結果として技術が他国に移転される事態となりました。今後は、資源の多様化やリサイクル技術の開発が求められています。

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