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2025.02.18

レアメタル千夜一夜 第14夜 中国の輸出規制を受けて想起したこと

 中国商務省と税関当局は、2月4日に国家安全保障上の利益保護を理由として、タングステン、テルル、モリブデン、ビスマス、インジウムの5種類の金属の輸出規制を実施すると発表しました。このニュースを受けて、私の過去の経験を振り返りたいと思います。


 まず、日本政府や大手企業の行動パターンについて理解することが重要です。日本政府が中国からの圧力を感じると、すぐに日中友好協会などを通じて中国に謝罪するために訪問を考える国会議員がいますが、これはあまり効果的ではないことを認識する必要があります。


 私の経験では、2014年頃に民主党の代表団(団長は岡田克也)が中国に訪問し、レアアースの安定供給を求める要請書を提出しました。このような行動は、中国政府にとってレアアースの輸出禁止を外交的手段として利用する良い機会を与えるだけです。私たち日本の商社が裏ルートで頑張っている努力が無駄になってしまいます。


 中国の輸出許可証を利用し、東南アジア経由での輸出計画も考えられますが、余計なことをすると全てが台無しになってしまいます。専門的に深く考えない素人が介入すると、よくない結果を招くことがあるのです。


 レアメタルパニックを何度も経験した私たちの考えには、以下のような側面があります。


1. 産業連携の推進に関する課題:


 産業連携を推進するには、異なる企業文化や利益相反を乗り越える必要があります。特に、日本の企業は保守的な文化が強く、オープンな情報共有や協力が難しい場合があります。連携の成果が短期的に見えにくいため、企業間の信頼を築くのが難しいという課題もあります。


2. 国際的なパートナーシップの構築におけるリスク:


 国際的なパートナーシップは、信頼できる国との関係を築くことが前提ですが、地政学的リスクや国際情勢の変動により、パートナーシップが脆弱になったり、支援が期待できなくなることがあります。


3. 持続可能な資源利用の推進に関する課題:


 持続可能な資源利用を推進するためには、初期投資が大きく、短期的にはコストが上昇することが多いです。企業がすぐに利益を求める傾向がある中で、長期的な視点で持続可能性を追求するのは難しいことがあります。


4. 新興市場へのアプローチの難しさ:


 新興市場には多くのビジネスチャンスがある一方で、現地の法律や文化、経済状況が異なるため、参入障壁が高い場合があります。現地企業との競合や政治的リスクも考慮しなければならず、安定した利益を確保するのが難しいことが多いです。


5. イノベーションを促進する政策の導入に対する懸念:


 政府がイノベーションを促進するための政策を強化することは重要ですが、政策が市場ニーズに合致しない場合、企業が資源を無駄にするリスクがあります。


 これらの反論を考慮することで、日本が直面する課題やリスクをより現実的に評価し、効果的な対策を取ることが可能になります。理想論だけでなく、実際の実行可能性やリスク管理を重視した戦略を構築することが重要です。


 さて、中国政府が実施した今回の輸出規制は、タングステン、テルル、モリブデン、ビスマス、インジウムの5種類であり、即日実施されました。中国の貿易窓口にとっては、対日輸出ができなくなるため困難な状況に直面していますが、我が国には企業在庫と国家備蓄が十分にありますので、大騒ぎする必要はありません。


 普段から準備をしていれば、困ることはないのです。

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