お知らせ
2025.02.06
中国商務省と税関当局は4日、国家安全保障上の利益保護を理由にタングステンなど5種類の金属の輸出規制を実施すると発表した。
対象は、タングステン、テルル、モリブデン、ビスマス、インジウムで即日実施した。輸出規制は、米国の対中追加関税が発効した数分後に発表された。
これらのレアメタルはスマートフォン、電気自動車(EV)バッテリー、太陽光パネル、赤外線ミサイル、弾薬など、多くの分野で使用されている。
商務省は「国家安全保障上の利益を守る」ため、これらの金属と関連製品の輸出には今後、許可が必要になると説明した。これまでのような全面的な禁輸ではなくて米国との貿易摩擦に巧妙に慎重に対応する姿勢を示している。
このニュースは我々は特別の緊急ニュースだとは見てはいない。トランプ大統領の就任に於いて対中貿易摩擦が強化されることは予想されていたからだ。
従って中国がアメリカに対して報復措置を取る場合、レアメタルの輸出規制や関税の引き上げなどが実行されるとは24年秋からの読み筋であった。
これにより、アメリカの製造業に影響を与え、特にハイテク産業において供給不足が生じる可能性は誰でも知っていた。
貿易摩擦の背景については近年、中国とアメリカの間で貿易摩擦が激化しており、技術や知的財産権、国家安全保障に関連する問題が焦点となっていた。 しかし対米報復措置としてインパクトが高いものにはレアメタルの輸出規制を出してくるのは中国の分かりきった得意技である。
レアメタルは、電子機器、再生可能エネルギー、電気自動車などの製造に不可欠であるから先ず始めは規制品目を徐々に増やしていくのがパターンである。相手の出方を見ながら先ず輸出許可制を発表して輸出禁止をちらつかせながら交渉手段を強化するのである。
中国は世界的な供給チェーンにおいてレアメタルやレアアースは重要な役割を果たしている。中国はこれらレアメタルの主要な生産国であり、供給を制限することで他国に対して強力な影響力を露骨に行使してゆくのだ。
中国のこのような措置に対して、国際社会や他の国々が反応することが予想されるが、特に日本や欧州連合など、レアメタルの供給に依存している国々は、既に代替供給源の確保に動かざるを得なくなっていた。我々レアメタルトレーダーは昨年から手は打っていたが日本市場の場合業界の結束力が弱く政府に依存する事が多い。特に既得権益に守られている大企業は横並びの対応しかしない場合が多い。
このような貿易摩擦が続く中で、各国は自国の供給チェーンの安全保障を強化し、レアメタルのリサイクルや代替素材の開発に力を入れる必要があるのは当たり前の事である。日本政府の主導で緊急に対抗策を講じなければならないが残念ながら産業界が一枚岩になることは滅多にない。
地震予想と地震の備えと同じ話で大地震が発生してから大騒ぎするのは笑止千万である。
問題はタングステン、テルル、モリブデン、ビスマス、インジウムの各元素戦略が実際に機能しているかどうかである。