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2025.12.25

レアメタル千夜一夜 特別投稿 静かなる地殻変動―2026年相場急騰の予兆

 2025年の日本列島は、静かに、しかし確実に値上がりの波に覆われていた。ガソリン、電気代、食品、物流費――あらゆる分野で“生活の底”が押し上げられ、庶民の嘆きは日々の買い物に溢れている。だが、このインフレの息切れは来年になっても止まらない。むしろ世界経済の地殻はさらに大きく動き、物価はもう一段階、重くなるだろう。


 その中で、目に見えぬところで最も激しく揺れ動くのが、レアメタル相場である。私は半世紀近くこの世界に身を置き、世界116カ国の鉱山、冶金工場、そして荒野の奥地まで歩いてきた。その経験から断言できる。**2026年は、“相場が目覚める年”**である。そして2027年には、さらに激しい炎が市場を包むだろう。相場とは人々が油断したときに動く。今、世界はまさにその静けさの中にある。


■供給の“静かな崩壊”が始まっている


 レアメタル価格が跳ねるとき、その理由は必ず供給側にある。需要は多少上下しても、材料が市場へ流れさえすれば価格は暴れない。しかし、いま世界中の鉱山は、静かに、そして深刻に止まりつつある。中国は環境規制を強め、レアアースやタングステンの採掘量を数年連続で抑制している。中央アジアやアフリカは政情が不安定で、外国資本の新規投資は凍り付いたまま。ロシアは制裁で物流が途絶え、南米は資源ナショナリズムが再燃し、外国企業の参入はますます難しくなっている。


 鉱山開発というものは、一度止まるとすぐには戻らない。再開に必要な許認可、人材の再配置、掘削設備の復旧……どれをとっても最低三〜五年はかかる。つまり、2026年の供給量はすでに決まってしまっており、もはや増やせないのである。地球は急には応えてくれない。この単純な真理こそが、相場を押し上げる最初の力となる。


■沈まない戦略分野――不景気でも需要は減らない


 一方、需要側はどうか。世界経済は減速しているのに、レアメタル需要は不思議なほど落ちていない。その理由は明快である。レアメタルが使われる分野は、いまや景気とは無関係の「国家戦略分野」だからだ。
● EV・蓄電池
● データセンター・半導体
● 再生可能エネルギー
● 軍需・宇宙産業


 これらは国の命運を握る産業であり、不景気になろうと止めることはできない。むしろ地政学が不安定になるほど、各国はもっと多くの材料を欲しがる。レアメタルとは、平和よりも緊張の時代に使われる。歴史を振り返れば、戦争や紛争の前後には必ず価格が跳ね上がった。


 そしていま世界は、米中分断、AI覇権争い、ウクライナ戦争、中東情勢――複数の火種が同時並行で燃えている。各国は輸出規制を強め、材料の囲い込みを始めている。市場は表面上は静かだが、水面下では在庫が減り続けている。この沈黙こそ、2026年の大波を告げる最も危険な予兆である。


■2026年は動き、2027年は“火を噴く”


 私は相場に長く向き合ってきて、一つの“経験則”を持っている。それは、相場には二年周期の波動があるということだ。
一年目 …… 静かに動き出す
二年目 …… 一気に火がつく


 2026年はまさに“動く年”。その翌年、2027年には火がついたように上昇するだろう。相場が上がる理由は決して難しくない。「企業が買い急ぐから」である。上がり始めた瞬間、世界中の調達担当者が同時に走り出す。すると市場から材料が消え、価格はさらに上がる。乾いた草原に火が走るように、上昇は連鎖して広がる。供給が増えない世界で買い急ぎが起これば、暴騰は必然だ。そして2027年こそ、その年になる。


■なぜ“不景気の今こそ”在庫を積むべきなのか


 不景気になると企業はコスト削減を優先し、材料の在庫を減らす。しかし、レアメタルの世界では、この常識は危険だ。なぜなら、安く買えるのは不景気のときだけだからである。さらにもう一つ重要な理由がある。価格が上がり始めてからでは、買いたくても買えなくなる。


 これは私が現役で経験した数多くの暴騰局面で、毎回目にしてきた現実だ。価格そのものより「入手できるかどうか」が企業の競争力を左右する。材料を確保できる会社が勝ち、確保できなかった会社は市場から退場する。20年後の勝者は、いま静かな市場で備蓄を始めた企業である。嵐の前に帆を張る者だけが、生き残る。


■レアメタルの世界で最も危険なのは“沈黙の期間”


 嵐の前の海は凪ぐ。レアメタル相場もまったく同じだ。人々が「不景気だ」と嘆いている間に、鉱山は止まり、在庫は減り、価格上昇のエネルギーが静かに蓄積されていく。相場とは振り子であり、止まれば必ず逆側に大きく振れる。今の静けさは、反動の始まりにすぎない。私は1989年、2006年、2010年、2021年――何度もこの現象を経験した。そして共通点は一つだった。


暴騰の前の年ほど、市場は不思議なほど静か。


 今、まさに同じ空気が漂っている。ここで過去のレアメタル相場の現象を振り返ってみたい。
1.メカニズムの真偽:理論的に「正しい」
まず、エッセイの主張する論理は経済合理性がある。
1. 静寂(不況・価格低迷期): 価格が安いと、鉱山会社は新規開発(探鉱)をやめ、不採算鉱山は在庫を極限まで減らす。
2. 潜伏期間(リードタイム): 鉱山開発には5〜10年かかる。投資を止めた影響はすぐには出ず、数年後に「供給能力の欠如」として現れる。
3. 暴騰(需要回復期): 景気が戻り需要が増えた瞬間、供給が追いつかず、価格が跳ね上がる。


2. 過去の事例を検証してみたい。
以下に記載された年代は、実際にレアメタルや資源相場が大きく動いた時期である。


① 2010年の事例:レアアース・ショック
最もわかりやすい「静寂からの暴騰」の例である。
【静けさの期間(2008〜2009年)】
• 状況: リーマンショックによる世界同時不況。
• 供給側の動き: 需要が蒸発したため、多くの鉱山が操業停止や閉鎖に追い込まれた。特に西側のレアアース鉱山は、中国の安値攻勢もあり、ほぼ全滅(生産停止)状態であった。
【暴騰(2010年)】
• 出来事: 尖閣諸島問題が発生し、中国が日本へのレアアース輸出を実質禁止。
• 結果: 世界中がパニック買いに走ったが、不況期に鉱山を閉じていたため、中国以外からの供給がほぼゼロであった。結果、価格は数ヶ月で数倍〜10倍以上に暴騰する結果となった。


② 2006年の事例:中国爆食(資源スーパーサイクル)
【静けさの期間(1990年代後半〜2002年頃)】
• 状況: 「資源はオワコン(終わった産業)」と言われた時代であった。ITバブルに投資が集中し、鉱山開発への投資は長年おろそかにされていた。 【暴騰(2003年〜2008年、ピーク2006-07年)】
• 出来事: 中国の急速な経済成長(北京五輪へ向けた建設ラッシュ)。
• 結果: 銅、ニッケル、鉄鉱石などの需要が爆発したが、長年の投資不足(静けさ)のツケで供給が全く追いつかず、歴史的な資源高騰(スーパーサイクル)が起きた。ニッケル価格は2006年から2007年にかけて約5倍になった。


③ 2021年の事例:コロナ後のグリーン・インフレ
【静けさの期間(2020年)】
• 状況: パンデミックによるロックダウン。原油価格が一時マイナスになるなど、資源需要が消滅。「在庫を持つのはリスク」とされ、サプライチェーン全体で在庫が圧縮された。
【暴騰(2021年〜2022年)】
• 出来事: 経済再開と世界的な脱炭素(EV)シフトの加速。
• 結果: 急激な需要回復に対し、コロナ禍で止まっていた物流と鉱山が動けず、リチウムやコバルト、銅などが暴騰した。リチウム価格はこの時期から10倍近くまで跳ね上がった。


④ 1989年の事例:バブル経済の絶頂
【静けさの期間(1980年代半ば)】
• 状況: 1985年のプラザ合意後の円高不況や、原油価格の逆オイルショック(暴落)があり、資源価格は低迷していた。
【暴騰(1988〜1989年)】
• 出来事: 日本のバブル経済最高潮と、冷戦末期の軍需・民需の入り混じり。
• 結果: 亜鉛やニッケルなどが供給不足に陥り、相場が高騰した。


3. 結論:これらの指摘は「事実」に基づいている。


 以上はドラマチックに書かれているように感じるかもしれないが、その背景にあるデータは歴史的事実である。
• 「暴騰の前の年ほど、市場は静か」
これを投資の世界では**「谷深ければ山高し」**と呼ぶ。不況で投資が減れば減るほど(谷が深いほど)、その後の供給不足による価格上昇(山)は高くなる。
• 「2025-2026年現在はどうか?」
→ 実際に現在(2024-2025年想定)、リチウムやニッケルなどのバッテリーメタルは供給過剰感から価格が下落・低迷しており、多くの鉱山プロジェクトが延期・中止されている。これはまさに私が指摘する**「静かなる供給崩壊(次の暴騰の準備期間)」**の条件を満たしている。以上の事実より来年と再来年の私の予測は説得力があるだろうか?


■結び――「買うべき時は、誰も買わぬ時」


 山師の世界には、昔からこんな言葉がある。「買うべき時は、世間が寝ている時」これは単なる格言ではない。50年の現場経験で私自身がたどり着いた答えでもある。2026年、レアメタル相場は必ず動く。2027年には火がつくように跳ね上がる。


 それは地政学、供給構造、投資停滞、在庫減少――いずれを見ても避けられぬ流れだ。だからこそ、不景気の今こそ動くべきである。相場が上がり始めてから走っても、もう手は届かない。地下の鉱脈はすでに静かにうねり始めている。その微かな振動を感じ取れる者だけが、次の時代を制し、世界の資源戦争を生き残るのである。

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