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2025.09.08

レアメタル千夜一夜 第73夜 運命を変えたレアメタルとの出会い—ブラジルの大地が導く自己発見の旅

学問の迷いの森を抜けて


 運命の糸に導かれた私は、22歳の若さゆえに夢と現実の間で揺れ動いていた。大学院での研究による壁に直面し、進むべき道を見失ったことで、まるで霧に包まれた森の中に迷い込んだかのようであった。木材工業化学を専攻する心の奥では、ブラジルの森林事情に触れることで真実を求める願望が強まった。しかし、未来への漠然とした不安の中で、休学を選択し、ブラジルの森林開発の未知なる地へと足を踏み出すこととなった。これはただの留学や放浪の旅ではなく、自己を再発見するための旅であった。


サンパウロの華やかな運命


 サンパウロに降り立ち、新たな出発の気配を感じながら、知らない街での孤独な日々が始まった。日本人移住者や商社駐在員のもとに居候し、放浪の中で人生の意味を探求する毎日。特に大学の先輩の友人である堀谷氏に世話になった。また彼の舎弟である4人の移住者との語り尽くせない共同生活も経験した。リオやイーリャグランテの旅のあと、サンパウロで出会った商社マンに世話になった。彼の暖かい人柄が私の心を解きほぐした。32歳の彼は、ロマンに満ちたビジネスマンであり、夜になるとボアッチというブラジル風クラブへ連れ出してくれた。その華やかな夜の中で、彼はブラジルの経済の要となるレアメタル特にニオビウムの重要性を語った。迷いの中にあった筆者は、その惹きつけられる話に瞬時に心を掴まれ、彼の話の中に自らの未来を見出していった。


ボアッチの夢幻—夜の世界での学び


 ボアッチというクラブでの体験は、まるで夢の中にいるかのような錯覚を呼び起こした。華やかな女性たちの笑顔、ボサノバが奏でられる中で酒が織りなす幻想的な雰囲気に、私は無邪気な若者として、心を高鳴らせた。豪華な社交界には無数の出会いがあり、レアメタルに関する議論が交わされた。資源貧国である日本にとって、ブラジルという国がもたらす可能性を語るその緊張感は、筆者の心に夢を宿らせ、未来への道を拓く一助となった。


新たなレアメタルの扉を開く


 帰国の後、筆者はレアメタルを扱う専門商社に就職するという明確な目標を抱くも、当時の日本市場には選択肢が限られていた。レアメタルは未だ一般的ではなく、大手商社の鉄鋼部門にしか取り扱われていなかった。しかし、商社ランキング10位の専門商社に入社し、27歳で新たな旅立ちを迎える。その後、数年の管理部門での修業を経て、気づけば30歳。退職を決意したら急遽営業部へ転属となり、化学品本部の無機化学品課に配属された。知識を深める中、筆者のレアメタルへの情熱が再び息を吹き返す。この選択が、運命の流れを変える一歩となった。


ブラジルでの体験が人生を変えた?


 ブラジルを旅する中で、訪れた広大な大陸は心に深い印象を残した。バイヤ、ベレン、サンタレン、マナオス、マットグロッソなど、多くの場所を巡り、数々の人々に助けられた経験が、私の内面を豊かにした。特に、サンパウロでの東本願寺別院とのつながりや、大谷暢慶老師の教えが、心の中で静かな響きを持った。ブラジルの自然やアマゾン川の雄大さは自己探求の一先に立つ助けとなり、命の重みを感じる瞬間へとつながった。これらの経験から自分の決断力や胆力を身につけ、将来的なレアメタル取引に対する思考を確立することとなった。


感謝の念と振り返りの時


 ブラジルでの経験自己形成にかけがえのない要素をもたらした。異文化との接触やビジネスのリアルを知ることで、私はレアメタル業界でのリーダーとして成長する基盤を築いた。レアメタルに対する情熱は、この旅で得た経験から形成された事実であり、資源国とのつながりの重要性を理解する力を与えてくれた。これからの人生においても、異文化理解の重みを忘れずに歩み続けたいと願っている。


まとめ


 この貴重な経験により生まれた自身の指針は、レアメタルへの情熱と共に、未来を照らす光となっている。ブラジルの旅が、自分の人生に与えた意味を再認識し、これからもその教訓を心に刻むことを誓う。未知なる地での体験は未来への道しるべであり、豊かな人生を築く力となるに違いない。この深い思索を持って、レアメタルを天職として新たなる旅路を歩んで行く所存である。

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