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2025.02.18

レアメタル千夜一夜 第18夜 プラチナと癌の関係

 プラチナは、貴金属の中でも特に希少価値が高く、レアメタルには属さないものの「超レアメタル」として扱われます。貴金属には金、銀、プラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの8種類があり、これらは加工性が良く、化学的に安定しているため貴金属と呼ばれています。近年、トランプ大統領の経済政策を背景に、金やプラチナ、パラジウムの価格が高騰する兆しが見られ、貴金属の重要性が再認識されています。


 プラチナは南アフリカ、ロシア、ジンバブエなどで産出され、特に南アフリカは世界のプラチナ供給の約70%を占めています。そのため、これらの国における地政学的リスクや鉱山労働の問題は、供給の安定性に影響を与える可能性があります。


 プラチナと言えば、多くの人がまずジュエリーや高級時計を思い浮かべるでしょう。しかし、実際にはがん治療においても非常に重要な役割を果たしています。プラチナ製剤は現在の抗がん剤治療の中核を成しており、大腸がん、肺がん、卵巣がんなど、多くの固形がんに使用されています。代表的な製剤にはシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンがあり、これらはがん細胞のDNAに結合してその複製を妨げ、細胞の自滅を促進します。


 特に、シスプラチンは1970年代に導入され、多くの患者の命を救ってきました。オキサリプラチンは大腸がんの治療において重要な役割を果たし、FOLFOX療法の一環として使用されています。また、肺がん治療でもプラチナ製剤は欠かせない存在です。


 しかし、プラチナ製剤には「プラチナ抵抗性」という課題があります。がん細胞が治療の過程で耐性を獲得することがあり、この状態では従来のプラチナ製剤の効果が期待できません。そのため、新しい治療法や技術の開発が求められています。例えば、PARP阻害剤や免疫チェックポイント阻害剤といった新薬が、プラチナ抵抗性がんの治療に注目されています。


 プラチナの供給が途絶えると、がん治療にも深刻な影響が及ぶため、リサイクル技術の向上や代替材料の開発が進められています。医療分野では、限られたプラチナ資源をどのように有効に活用するかが今後の大きな課題です。


 結論として、プラチナはがん細胞と戦うための重要な金属であり、現在のがん治療には不可欠です。プラチナなしでは多くの治療が成り立たず、がん治療の成果が大きく変わる可能性があります。新しい治療法の開発が進む中でも、プラチナとがんの関係は今後も医療の進歩とともに深く結びついていくことでしょう。

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