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2025.02.18

レアメタル千夜一夜 第19夜 国際バッテリーサミットにおける米中対立の構造分析(マクロ視点)

 本エッセイでは、2025〜2026年の国際バッテリー市場における米中対立の構造をマクロ視点から分析します。このテーマは、国際バッテリーサミットのパネルディスカッションにおける主要な論点と密接に関連し、経済、政治、軍事の各側面から議論を展開することが求められます。


### 1. 米中バッテリー戦略の違いと2025〜2026年の展望


#### (1) 米国のバッテリー戦略とその背景


 米国は、トランプ大統領の下で始まった新政策を通じて、バッテリー産業を経済安全保障の重要な要素と位置付け、国内生産の強化と中国依存の排除を推進しています。この政策は、特に中国からの輸入に対する報復関税措置を含み、貿易摩擦を激化させました。トランプ政権は、中国製品に対して高い関税を課すことで、米国の産業を保護しようとしましたが、これに対抗する形で習近平主席は中国製品への報復関税を導入し、米中間の緊張関係は一層深まりました。


● 経済的側面
– バッテリー生産の国内回帰(IRAによる税制優遇)
– レアメタルの自国調達及び友好国との連携強化(カナダ・オーストラリア)
– EV普及政策と補助金の導入(中国製バッテリーの排除と米国・欧州・日本製の優遇)


● 政治的側面
– 欧州、日本、韓国との連携強化(「脱中国」サプライチェーンの構築)
– 中国製EVの米国市場進出の制限(関税引き上げ、補助金対象外)
– グリーン技術を通じた外交戦略(新興国市場への影響力拡大)


● 軍事的側面
– リチウム・コバルトなどの調達確保(中国の資源支配に対抗)
– バッテリー技術の戦略物資化(半導体と同様に国家安全保障の対象)
– 米軍向け電動車両・蓄電技術の強化(次世代軍事技術の確保)


#### (2) 中国のバッテリー戦略とその背景


 中国は、習近平主席の指導の下で「バッテリー産業の世界支配」を目指し、国家主導の政策でEV・バッテリー市場を拡大しています。特に、一帯一路を通じたレアメタル確保や、CATL・BYDを中心とした市場支配が顕著です。


● 経済的側面
– 「中国製造2025」に基づくEV・バッテリー産業の振興
– CATL、BYDを中心とした市場支配の強化(価格競争と技術力による優位性)
– 一帯一路を活用したレアメタル確保(アフリカ・南米の鉱山投資)


● 政治的側面
– 中国EV・バッテリー技術の国際標準化(技術規格の主導権争い)
– ASEAN・中東・アフリカ市場への影響力拡大(欧米市場への依存からの脱却)
– BRICS(ブラジル・ロシア・インド・南アフリカ)との協力強化(米国の経済圏に対抗)


● 軍事的側面
– バッテリー技術の軍事転用(ドローン・潜水艦・電動戦闘車両への応用)
– 米欧日との技術分断を見据えた自国開発の強化(ハイテク覇権争い)
– ロシアとの軍事技術交換(ウクライナ戦争後の協力深化)


### 2. 国際バッテリーサミットへの影響(2025〜2026年の予測)


 2025年以降、米中のバッテリー産業は二極化が加速する可能性が高いです。米国陣営(米・欧・日・韓・カナダ・オーストラリア)は中国バッテリー排除の動きを強め、中国はASEAN・中東・アフリカ市場へシフトし、新たなバッテリー経済圏を形成するでしょう。また、バッテリー規格の国際標準争いが激化し、EV市場の競争は関税や補助金政策により加速することが予想されます。


● 米中ブロック化の進行
– 2025年以降、米中バッテリー市場の完全な分断が進む可能性があります。
– 日本企業は「米国陣営」と「中国市場」のどちらを選択するかが問われることになります。


● 世界市場における影響
| 項目 | 米国陣営 | 中国陣営 |
| 主要国 | 米国、EU、日本、韓国、カナダ、オーストラリア | 中国、ASEAN、中東、アフリカ、ロシア |
| 主要企業 | テスラ、GM、パナソニック、LGエナジー | CATL、BYD、NIO |
| レアメタル調達 | カナダ、豪州、米国内 | アフリカ、南米 |


### (3) パネルディスカッションの主な論点
– 米中バッテリー戦略の違いと2025年以降の展望
– 中国製EV・バッテリーの市場支配を防ぐ方法はあるのか?
– バッテリー技術の国際標準はどちらが握るのか?
– 日本の産業界は米中対立の中でどのように対応すべきか?


### 結論:バッテリー市場の未来と国際競争の行方


 2025〜2026年には米中バッテリー産業が完全に分断される可能性が高いです。国際バッテリーサミットでは、バッテリー規格の主導権争いが最大のテーマとなるでしょう。また、関税・補助金政策がEV市場を大きく左右し、米中の競争はさらに激化することが予想されます。


 次回のエッセイ「第20夜 レアメタルアルケミストの分析 〜 バッテリー産業におけるミクロ視点」では、サプライチェーンの分断、主要企業の戦略、技術開発競争、関税の影響などを分析し、バッテリー業界が直面する課題を明らかにします。

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